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控訴審の争点

 下関判決において、関釜裁判は戦後補償裁判史上初めて「一部認容」を勝ち取った。しかし、後の「慰安婦」訴訟や「女子勤労挺身隊」訴訟の判決では、事実認定もなしに原告の請求を棄却して、立法化への傾きが一気にゆり返される判決が続いている。
 この広島控訴審では、「下関判決」で勝ち取った、国の法的責任と立法義務を堅持して、更に公式謝罪や元女子勤労挺身隊原告の請求も勝ちとっていくことが目標となっている。
 以下で、控訴審に提出された準備書面に基づいて、原告側と被告(国)側の双方の主張を簡単に見ていきたい。

原告側の主張
 控訴審での争点は
(1)道義的国家たるべき義務による責任
(2)損失補償責任
(3)立法不作為による国家賠償責任
(4)挺身隊契約の不履行による損害賠償責任
(5)不法行為による国家賠償責任
(6)公式謝罪の必要性

 この内(6)は、控訴審でつけ加えられた。
 (1)の「道義的国家たるべき義務による責任」が第一審に引き続いて原告側の主要な法的根拠である。(
「法的根拠」1〜5参照)

被告国側の主張
 下関判決が、元「慰安婦」原告への人権侵害に対する救済立法を怠った国会議員の不法行為(立法不作為)について、国家賠償法を適用したことに、被告国は以下の二点から、異議を申し立て控訴した。
(1)立法不作為による国家賠償法の適用は認められない。
(国会の裁量権を侵すもので、三権分立の原則に反し、「国会の立法行為は政治責任のみについて問われ、原則として賠償責任は問われない」とする最高裁判例に違反している)
(2)例外的に適用され得るという説を仮に立て得たとしても、原判決(下関判決)の元「慰安婦」原告への適用は説得性をもたない。
(元「慰安婦」原告の証言は信用できず事実認定は証拠に基づかない、また戦後補償は日韓条約で解決ずみであり、更に「アジア女性基金」でも誠実な対応を既にしている)