金芝河を読む 〜名誉編集長の首都圏便今年の初め、JR水道橋近くの「韓国YMCA」で開催されていた「韓国詩の世界」という五週連続の文学講座を受講していた。尹東柱(ユン・ドンジュ)は、福岡で十年以上にわたって、毎月一回の、作品を読み解く会に参加していたが、彼以外の韓国詩人はほとんど知らないのが実際のところだったからだ。
戦前からの詩人の作品を時間を追って、源詩で鑑賞。しかも講師の女性(日本文学を研究されているキム・フナさん)の講義も大半は韓国語。必死で耳を澄ますがでわたしの語学力では、半分も聞き取れない。周囲の受講者がうなずいている横で、ぽつねんとわからずに座っているのは情けなかった。最後の週に、テキストから自分で好きな詩人を選んで翻訳して発表する、という課題が出た。わたしは金芝河(キム・ジハ)を選んで、彼が獄中で書いたという詩を辞書をひきひき苦労して訳してみた。
わたしが十代の頃、軍事政権下で弾圧され、民主化運動の象徴だった金芝河。そしてすっかり韓国は変貌し、中年になったわたしがこうして彼の詩を翻訳している。やっぱりどこか感慨深い思いがあった。(Y)