在日米軍基地における性暴力と「慰安婦」問題S・A
最近、福岡で「米軍基地と性暴力」を考える二つの集会がありました(一つは藤目ゆきさんのお話)。一方、立法ネットでは今年に入り秦郁彦著『慰安婦と戦場の性』の連続学習会を開いてきました。
集会と学習会に参加してさまざまな事を考えさせられました。戦後六三年も経ったのに未だ日本政府が明確な謝罪もしないまま未解決な「慰安婦問題」と、基地周辺で起こる女性への性暴力の問題の根は同じといえます。元「慰安婦」の方が《あの沖縄の少女は私だ。私はあの沖縄の少女だ。》と発言しています。秦郁彦氏は著書『慰安婦と戦場の性』第五章で、各国の軍隊がいかに兵士の性処理は当然だという前提のもとに配慮してきたかを示し、日本軍の慰安婦制度は決して突出して残酷なものではないと主張していました。そこには女性の人権に対する絶対的軽視と国家権力への服従の姿勢があります。
米軍の駐留は政治的、外交的に決定されたものです。沖縄、佐世保、岩国などの米軍基地では女性に対する性暴力が敗戦直後から朝鮮戦争、ベトナム戦争、対「テロ」戦争と絶えず戦争帰りの特に海兵隊によって起こされています。岩国基地と米軍犯罪について一九五二年から二○○七年の年表で見るとホステス、接客業関係の女性が八名殺害され、女性へのレイプ、暴行、男性への被害も含めるとざっと三○件近い犯罪が岩国基地周辺で起こっています。性犯罪が表に出にくいこと、又、一九五二年に対日講和条約が発効している事を考えると、それ以前の犯罪の多くが隠蔽されてきたと考えられます。性被害は親告罪なので、被害者が訴えないと裁かれないため、被害女性が深刻な後遺症を抱いたまま沈黙したり、告訴を取り下げたりと、日本社会全体の問題となりえず、支援体制が不在なまま現在に至っています。事件が起こるたび、女性側の落ち度として誹謗中傷する声があるかぎり性被害はなくならないでしょう。「軍事基地と女性」ネットワークの藤目ゆきさんは警察、地検への公開質問状を申し立てる一方、活動の重要な柱の一つとして、性暴力を受けた女性とコンタクトをとり支えていくことを上げておられます。
昨年の「米軍岩国基地所属海兵隊集団レイプ事件」では「被害者の証言の曖昧さ」という理由で広島県警と地検は不起訴としました。日米安保体制にひびが入らないような政治的思惑から日本は主権を放棄し、米軍の「大軍事法廷」で裁かれる事になりました。[軍法会議は真実の追究や社会正義の擁護のために設置されているのではなく、軍隊の利益・軍規の維持のために設置されるものにすぎません。](レイプ事件への公開質問状より)
米軍基地での軍法会議は基本的に公開されていません。岩国と今年二月に起きた沖縄少女暴行事件の軍法会議は公開とは名ばかりの厳重な管理のもと行われ、被害女性が衝立のないところで証言をさせられるなど問題は多いのです。
米軍再編により日本本土も沖縄並みに自衛隊基地が日米共同使用できるように拡張されつつあります。特に自衛隊基地がソ連崩壊後、西方重視にシフトしてきた事。福岡では築城基地が普天間飛行場の代替として滑走路の拡張、燃料タンクの増設など、朝鮮戦争当時地元に住んでいた方からは又あの治安の悪い恐ろしい時代に逆戻りするのではと危惧する声が報告されています。
「オレの心は負けていない」の宋神道さんはいろいろな場所で証言された後、必ず、「二度と戦争はしないこと」と自分のような被害者を再び出さないようにと呼びかけました。
私たちは彼女が繰り返し述べたその深い意味をもう一度強く受け止めねばならない岐路に差し掛かっているように思います。