原告滞在記
花房恵美子

　河順女さんと柳Ｔさんが、空港まで来ていて、ビザの期限切れで飛行機に乗れませんでした。きれいにオシャレをしていたというお二人の無念を思うと、涙ウルウルです。
　「今度韓国から十人も（結局、八人でした）日本に行くよ。どうしよう。布団を持って行こうか？」と電話で金文淑（キム・ムンスク）さん。
　冗談だと思っていたら、結婚した時の婚礼布団を持って福岡空港に登場！おみやげとのこと。笑いころげました。
　映画「アリランの歌　オキナワからの証言」の監督であり、金文淑さんの友人でもある朴壽南（パク・スナム）さんの突然の来福。交流会は総勢21名。にぎやかでした。
　不二越に連行された朴ＳＯさんは、富山の杉山とみ先生（韓国の国民学校時代の恩師）と電話で話すのをいつも楽しみにしています。今回も嬉しそうに杉山先生と話したあとで「先生が生徒の心配をしてどうするの。逆だよ。」と。杉山先生が朴ＳＯさんのことをいつも心にかけてくれているのが嬉しい様子でした。
　福岡交流会に上海出身の張（チャン）さんにも来てもらい、途中から李順徳（イ・スントク）さんを囲み上海慰安所現地調査の為の聞き取りをしました。李順徳さんは薄皮をはぐように記憶の糸を懸命にたぐっていました。
　不二越に連行された朴ＳＵさんは、意見陳述をするために色々と考えると、当時のことが思い出されて胸が痛く、ほとんど眠れなかったそうです。
　沼津の東京麻糸会社に連れて行かれた姜ＹＯさんは、一生懸命意見陳述の練習をしていて、おまけに朝、鎮静剤と精神安定剤まで飲んでいたのに、本番であがってしまい原稿の字も見えず、どこをよんでいるのかもわからず、考えていたことの万分の一も話せなかったとのこと。悔しくて帰りの車の中で女子勤労挺身隊の時覚えた日本の軍歌を歌いまくってきたとのこと。（朴ＳＵさん、李ＹＯさん、金文淑さんの四人で）被告席に並ぶ十人の男達の非情な威圧感に頭の中が真っ白になってしまったのでしょう。