関釜裁判ニュース第49号

ハルモニ達と共に羽ばたいた夏の日     あべ 

 

「八月十日にハルモニ達は蝶になる! 皆さんも蝶になって!」韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)の事務総長ユン・ミヒャンさんは七月二三日の福岡での講演会で私たちにそんなメッセージをくれました。

戦後六○周年という節目を迎えた今年八月十日に行なわれる「慰安婦」問題の早期解決を訴える「世界同時水曜デモ」へ向けて、連帯のメッセージを届ける為に福岡へ足を運んでいただいたのでした。

東洋思想では一時代の一区切りになる六○年が一つの単位になって、新しい年の到来を表します。この戦後六○年という節目に向かってハルモニ達も脱皮して蝶になるという。私達もこれまでの古い殻を脱ぎ去って平穏でないものに声をかけ、穏やかな日常がハルモニ達やアジアの戦争被害の人たちの頭上に補償される事を願って行動しよう!八月十日の「世界連帯デモ」の日はみんなで楽しみながら連帯しよう!と色々と考案した結果、「目立つ」ことを最優先にして、数人が黄色いシャツで頭には触角をイメージしたかつらを着けるいささか派手な蝶々ファッションの実践となりました。前日の九日には「戦後六○年世界同時デモ」のメイン横断幕を作りました。ピンクの色合いも美しい「六○年」の文字色には「被害者達の青春を返して」という思いが込められています。

一八時からの集会は主催者各団体の挨拶、ハルモニ達のメッセージ披露、東京からのメッセージやこの日に参加できなかった方々のメッセージも読み上げ、最後に共同声明を読み上げて、一八時三○分に会場の警固公園を出発しました。

「私と同じ年代のハルモニ達に想いを馳せて」と、Oさんがこの日チマ・チョゴリを着てハルモニになりかわってデモの先頭・中央に立って歩かれました。参加者約四○名程のデモ隊がきりっと引き締まり、素晴らしいスタートになりました。

警固公園から表通りに出て、私たちが何故今日この時に歩いているのかを訴えながら、皆さんも一緒に歩きましょうと呼びかけて、ゆっくりゆっくりのペースを保ちながら歩き続けました。時々「We shall overcome」の替え歌を「ハルモニ達に勝利を」という気持ちを込めながら歌って歩きました。そして列の最後から道行く人にチラシを配りました。

約五○分程歩いたでしょうか、道行く人には色々な反応があって知らぬ振りして通り過ぎる人もあればバチッと視線の合う人もいて、その瞬間にはしっかりメッセージを目で送りました。会釈する人、立ち止まって文字を読む人もいました。段々薄暗くなってから公園に戻り、そこで再びミニ集会をやりました。最後に「ハルモニ達に勝利を」の歌をもう一度歌って福岡の世界同時デモは静かな感動と共に終りました。闘っているハルモニ達と一緒に歩き、思いを重ねる事が出来た素晴らしい連帯!「世界同時デモ」の熱き一日でした。

世界同時デモから過ぎること一月あまり、あれから少しずつ私の脳裏に広がりつつある事があります。それは、この福岡でもソウルのハルモニ達の「水曜デモ」に連帯して何かやれる事はないだろうかということです。

この夏、戦後六○周年という節目の行事を様々な場所で体験して、やはり共感し続ける事の必要性を深く感じました。ハルモニ達への共感…それは、少しでも、「訴え続ける人たち」になること。想いが他人にさらせるようになること。行動する人たちを増やしていくこと。私たちが日々息をし続けるようにこの想いを伝え続けていくことが、実は一番の近道だということを感じはじめています。そうしてその感覚は既に支援する仲間の皆さんたちの中に浸透しつつあります。それをとても強く感じた先日の真相究明の会議でした。めげずにやるというのではなく、めげてもやりましょう。また立ち上がりましょう。また歩きましょう。 


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