関釜裁判ニュース第47号

朴頭理(パク・トゥリ)さんのいま さかもと(ソウル) 

(この朴頭理さんの病状報告は、さかもとさんから頂いたメールを事務局の責任で再構成しています)

 朴頭理おばあさんの今回のお見舞いは、二月二十日の日曜日に、昔、ナヌムの家の職員だった黄さんと二人で行って来ました。彼女の入院ももう一年になろうとしていると思います。

 火傷の部分からいまだに膿が出ているということで抗生物質を投入されておられますが、点滴はしておられません。去年の五月に私が初めてお見舞いに行ったときは鼻や腕に点滴チューブをさされ、ずっと眠っておられたので、それを考えると現在は本当によく回復されたと思います(去年、私が初めてお見舞いにうかがったときは、正直なところ もうダメだと思い、病室の外で、声を殺してひとしきり泣いてから帰ったものでした)。

 考えて見れば内臓を患って入院されておられるわけではないので、体力が落ちないようにきちんとお食事を取られ、お薬を飲まれれば、回復されるはずです。


 朴頭理おばあさんは、もともと食が細い方なので、そんなにたくさんは召し上がりません。さすがに歩かないので足の筋肉はすっかり落ちて、棒のような足になってしまっていますが、上半身はしっかりとした体格ですので、大きな心配はないのではないかと、素人ながらに思いました。 お食事は、おかゆではなくご飯で、おかずも肉じゃがをおいしく召し上がっておられました。胃腸は問題ないので本来ならご自分でお食事もとることができると思うのですが、黄さんや私が二人でお食事のお手伝いをしていました。すると彼女の食べたいものをなかなか私たちがくれないので、結局自分でスプーンを持って食べようとするような時もあり、朴おばあさんらしいなぁと思い、私たちは笑ってしまいました。

 食事に関しては、ご飯(お米)をあまり召し上がらず、パンが好きということで、看病人のおばさんがいつもパンを買ってくださるそうです。食事の量も心配するほどではなく、朴頭理おばあさんなりにしっかりと召し上がっておられると思いました。

 入れ歯を外しているので、モグモグとしていますが、食欲もあり、食事の面でも一安心でした。その姿を撮ろうとカメラの用意をしている間に、おばあさんがぺろりと食べてしまって、写真を撮ることはできませんでした。

 そのあと、車椅子で病院内(室内)を散歩しました。外は寒いので室内だけでしたが、おばあさんが靴を買いたいと言って、外に出してくれと、私たちの体を力いっぱい押してきました。もし退院することになれば靴がないとおっしゃり、本人はいつか歩いてナヌムの家に帰ることを望んでいます。

 おばあさんのお金は娘さんが管理しておられるのですが、娘さんがなかなかお見舞いにいらっしゃらず、非常にもどかしいです。自分は1ウォンもお金がないので、私たちにご飯をおごってあげられなくて申し訳ないとおっしゃったり、いつでも外に出られるように運動靴を買ってきてほしいとおっしゃって、雪あとの残る寒い外にパジャマ一枚で出かけようと、私たちにせがむ姿は本当につらかったです。

 看護人のおばさんは、いくら老人でも甘やかしてはいけないとおっしゃるのですが、私たちとしては私たちがおばあさんを想っていることを実感していただきたかったので、市内まで運動靴を買いに行ってきました。

 実際、歩ける状態じゃないので、看護人さんから、「まだ歩けないから靴は必要ないのに。そういうことをすると他の人にもせがむ癖がつく」と言われましたが、おばあさんが靴を抱きしめて興奮しながら喜ばれたので、ベッドの上で履かせてあげました。三千ウォン(三百円)の靴をあんなに大切そうに喜んでおられる姿を見ると、今、おばあさんに必要なのはみんなから愛されていると実感していただくことではないかと想わずにいられませんでした。黄さんと私もそれが重要だと思い、予定よりも長くいたり、往復タクシーは靴より高くつきましたが買ってきたりしたわけです。

 ナヌムの家におられるときは、遠慮をあまりされないのが朴頭理おばあさんのキャラクターでもありましたが、入院されてからは気遣いの言葉をよくされます。今回も「娘でも親戚でもないのに、本当にありがとう」と何度もおっしゃって、その姿が悲しかったです。

 私も論文で忙しかったのと、おばあさんが遠い病院に移られたので数ヶ月ぶりに行ったのですが「そろそろ来る頃だと思っているのに来てくれないから淋しかった。ずっと待っていた」とおっしゃり、今後はもう少し頻繁に足を運ぶようにスケジュールを調整しようと思います。

 実際のところ、やはり寝たきりですから、筋肉は落ちていくし、運動もしないので食欲が旺盛になるわけもありません。耳も聞こえないという状態で、どれほど心細いかと思い、彼女の精神力には本当に尊敬します。彼女の記憶力は鮮明ですし、痴呆はまったくありません。病状については、もう心配はないと思います。問題は精神的な支えが必要なように思います。

 いろいろな人が彼女を思っているということを自覚していただくのが、今、必要だと思います。支援をされておられる方々が、日本からお見舞いにいらっしゃる機会がありましたら、私も喜んでご案内しますので、おばあさんと面識があまりないという方でも大丈夫です。そのときはご一報下さい。

関釜裁判ニュース 第47号 目次