関釜裁判ニュース第47号

「消せない記憶」 十二・四全国同時証言集会  緒方貴穂 

 昨年十二月四日、全国十ヶ所で日本軍「慰安婦」被害女性の証言集会が開かれました(二ヶ所はビデオ上映会)。一人でも多くの学生に日本軍「慰安婦」被害女性と出逢ってほしい、出逢いからすべてが始まるから。そのような思いで、私たちは福岡での証言集会を準備しました。

 お招きしたのは、韓国の姜日出(カン・イルチュル)さんと支援者のKさん。集会当日はあいにくの雨でしたが、会場となった西南学院大学の講義室はほぼ満席(約二百人)で、学生も多数参加してくれました。

 姜日出さんは、時折肩を振るわせながら必死に話をされました。連行先の中国の慰安所で腸チフスが流行った時、罹患した女性たちのほとんどが日本兵に焼き殺されたとのこと。奇跡的に生き延びたのは、彼女を含め二人だけ。話が「解放後」のことに及ぶと、声を詰まらせておられました。「ずっと泣いて過ごしていました。結局私一人になって…」。その後、異国の地でどれほど苦労されたのか。ハルモニの涙から、想像するよりほかありません。「私はこの場で殺されてもかまいません。しかし、戦争で若者たちが死んでいくことには耐えられません」。日本の右傾化を憂い、戦争だけは起こしてはならないというハルモニのメッセージには、殺されていった仲間への思いやこれからを生きる若者への願いが込められているようでした。

 Kさんは、始めにスライドを用いて、ハルモニたちの絵を丁寧に紹介されました。そして、事実を知り、行動することの大切さを強調されました。「韓国に来て下さい。何も知らなければ偏見が生まれます。友達をつくって下さい。友達をつくれば、戦争なんかできません」。 

 八○年代の韓国民主化闘争を闘ってこられたKさんの言葉は、日本の学生や市民に対するエールのように感じられました。「岩のような独裁政権に対して、卵を投げるような闘いでした。つらい時もありました。それでもあきらめずに長い時間をかけて、平和の種を蒔きました。そして遂に、民主化を成功させました。自分たちの力を信じて、平和の種を蒔いて下さい。自分のために、そして子どもたちのために…」。

 集会後、多くの学生が熱心な感想を寄せてくれました。「ナヌムの家を訪問したい」「絵画展を開きたい」等々。日出さんと済淑さんは、確実に平和の種を蒔かれました。次は、私たち一人一人が平和の種を蒔いていく番です。自分たちの力を信じて。


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