第二次不二越訴訟第三回口頭弁論 藤田昌利(関釜裁判を支える広島連絡会)
三月十七日(水)、第三回口頭弁論に会から塚本さんと二人で参加しました。
いつもお世話になる夢ハウスで原告の李Jasさんにお会いする。当初予定していた原告二人の方が、ケガ等で来られなくなり、急遽決まった李さんは一人でもあり、緊張されている御様子でした。
午後一時すぎ、富山地裁前に集まった私たちは、李さんや弁護士が来られるのを拍手でもって出迎え、共に三階の第一号法廷へ。法廷は四十八の席に、四人用の長いすが三つ置かれていた。突発的な事件でマスコミの参加が少ない中、支援者でほぼ満席に近い。
裁判は一時半より始まり、提出書類の確認の後、李さんの意見陳述。
李さんは一九四五年春、十三歳のときに不二越に強制連行されたこと、不二越で過ごした八ヶ月は約束の反古、空襲の恐怖、睡眠不足、厳しい監視下の労働と極度の空腹など、一言で言って地獄のようなものだったと述べられた。その忌まわしい記憶は今もずっと心の重荷になっていると訴えられた。そしてこんなひどい仕打ちをした不二越は今も、話し合いを求めた時も、株主総会で謝罪と未払い賃金の支払いを要求した時も、真摯な謝罪と補償とはおよそ正反対の態度をとり続けていると。又、不二越は強制連行、強制労働の事実を隠し、私たちの国の三星(サムスン)と取引している。謝罪もしないで、韓国で商取引をすることはとうてい許すことはできないと述べられた。
李さんは緊張のためか、初めは声が少し小さかったが、段々と大きな声で、そして最後には最も大きな声できっぱりと「日本政府と不二越は真剣にことの是非を考えて、私たち被害者に謝罪と補償をするべき」と主張して陳述を終えられた。支援者から大きな拍手がわきおこりました。
次に島田弁護士から不二越への原告たちの動員が事実と異なる勧誘や脅迫によるものであり、到着後の軍隊式の厳しい訓練、厳しい監督下での重労働、体罰など、個々の原告の事例を上げて、これは正に強制連行、強制労働と言うべきもので、不二越は非を認め、謝罪と補償をすべきとの主張がされました。松山弁護士からは、賃金未払い、供託についての具体的な釈明が不二越に求められたが、あいまいな答弁で、その不誠実さが感じられた。吉川弁護士からは、国に対し事実の認否の要求が出され、二週間以内に返答するとの回答があった。次回は七月二十八日(水)午後一時半と決まり、原告(関釜関係の予定)の意見陳述と、原告側の法律論的反論がなされる予定。
三時前から、記者会見が行われ、島田弁護士より今回の原告の陳述が、現在の不二越の対応がいかに非人道的であり、何が求められているかを中心になされたこと、すでに提出されている原告の被害各論(二二名中十六名)の総論(要約)をのべた事などが説明されました。李さんは、自分の陳述に対し、裁判官や被告がどう思っているのかとの疑問を話され、あらためて被告席の人(法務省の役人と聞いた)の不真面目な法廷態度が思い出され、李さんの胸中を思うと怒りを感じました。
午後七時から報告集会が自治労会館で行われました。まず、二月二十日の株主総会のビデオが上映されました。次に渡部代表の挨拶があり、原告の証言の重さについて、自らの岩手靖国訴訟の経験にふれながら話され、又小泉の靖国参拝を許している我々の責任から日本人にとってのこの裁判の重要性について述べ、共に闘いましょうと呼びかけられた。
李さんは、心の安らぎになる言葉が裁判で聞けなかったのが残念、不二越をあまり追求できなかった等の感想と、支援へのお礼を述べられた。重たい役目を終えられ、李さんの表情はとても穏やかだと感じました。
李さんの話の途中で私たちは退席しました。支援には名古屋からも三菱朝鮮女子勤労挺身隊訴訟を支援する会の方が来られていました。