不二越と業務提携した韓国・三星(サムスン)企業に原告たちが抗議行動  
                                                              花房 俊雄

                             

昨年十一月二六日付けの北日本新聞は、韓国のトップ企業である三星電子と不二越がロボットを共同開発したと報じた。新聞によると、携帯電話やパソコン、液晶テレビなどに使うガラス基板の大型化に対応する第七世代ガラス基板の製造に対応できる搬送用ロボットを共同開発した。三星電子はソニーと提携して韓国内に建設しているガラス基板を製造する大規模な工場(六一万坪の敷地)で今後このロボットを使っていく。韓国外のロボットの販売は不二越が担う。不二越は今回の共同開発を契機に、三星電子グループに対し他の自社製品の浸透を図っていく方針とのこと。

この報道を知った不二越原告たちは、謝罪も補償も拒否している無慈悲な不二越と、韓国企業の三星電子が手を組むことに大きな怒りを持ち、今年一月十九日三星電子本社への抗議行動に立ち上がった。太平洋戦争韓国人犠牲者遺族会、太平洋戦争犠牲者光州遺族会、強制連行被害者補償推進委員会ら三団体と共に四〇名の年老いた原告や支援者が零下十度のソウルに結集し、三星電子本社に押しかけ一階大ホールに座り込んだ。後日送られてきた写真には、朴小得(パク・ソドク)さんら原告たちと、光州から八〇過ぎの老齢を押して出かけてきた李金珠(イ・クムジュ)さんの懸命に抗議する姿もあった。対応に出た三星電子の責任者に次のような要請書を手渡した。

 「…NACHI不二越は太平洋戦争当時、日本海軍の直轄工場として主に兵器の製造に専念した、いわゆる戦犯企業であり、かつ我が国の幼い十二〜十五歳の少女や青年たち千六百人以上を強制連行し、賃金も支払わず、飢えと極寒の中で働かせました。…我が国有数の企業で、『民族生気』を社是にするほどの貴社が、このような不道徳な日本企業と商取引をすることは容易ならぬことでであります。・・不二越が前非を悟り、当面の問題(補償と謝罪)を解決しない限り、この取引きは民族の良心上許すことはできません。願わくば、貴社においては事態の重要性に鑑み、NACHI不二越が前非を悟るまで、この取引きの中止を強力に求めます。…」

責任者は「不二越の過去に関しては知らなかった。今後会社内で検討する」との対応であったという。この交渉は韓国のテレビや新聞で大きく報道された。

不二越はグローバル化の時代を乗り切るための経営戦略をアジアへの進出におき、昨年は中国の大手自動車会社や、三星電子との企業提携を通して今後の業績の拡大を図ろうとしている。大手企業三星電子との提携は不二越の今後の事業展開にとって決定的な位置を占めるため、抗議行動の今後の展開いかんでは不二越による謝罪・賠償の道が開かれる可能性が十分あるといえよう。

 

  一方、富山での第二次不二越訴訟では、若手弁護士たち十数人が何度も韓国に足を運び、原告二三人(一人新たに追加提訴あり)の被害事実を詳細に聞き取り、膨大な陳述書の作成を完成させつつある。その過程で若い弁護士たちは被害者から学び、歴史認識を深め、裁判に大きな情熱を傾けてきている。私たち関釜裁判を支援する会は原告たちや、弁護団の取組みに応えうる一層の支援活動を心がけていきたいと思う。