高橋哲哉さん講演と対話集会への呼びかけ

東アジアの平和とわたしたちの責任 〜 有事法制、日朝交渉

五月十七日(土) 一四時〜十七時  西南会館大ホール(西南大学構内)
     前売り七00円(当日八00円)  学生無料
高橋哲哉さん対話集会実行委員会 連絡先092‐802‐****(平尾)


「挺身隊の記憶と有事法制」

平尾弘子


 ハルモニたちと福岡の支援メンバー数名は、大濠公園や福岡城址跡を散策してまわった。風に揺れる満開の桜の花びらも心なしか、薄い哀しみの色を宿しているように私の眼には映る。
 第二次不二越訴訟の原告のハルモニたちが、富山地裁提訴のため、来日した前後に関釜裁判を始め、最高裁まで上告されていた朝鮮半島出身者を原告とする戦後補償裁判が、次々と上告棄却という決定が下されていった。司法府が、これら「戦争と暴力の世紀」の犠牲者の必死の呼びかけを斥けると同時に、今日本政府はまた新たな拭いがたい断絶と相克を巻き起こす超大国の戦争の論理を容認してしまった。
 暖かい陽気に誘われて、公園には多くの人が繰り出していた。私は、その日、四歳になる双子の朋也と奈保子を一緒に連れてきていた。ハルモニの一行と私の子どもたちは、池の傍らにあるベンチに腰を降ろした。 濠公園の広大な池の水面は、柔らかな光を反射して揺れ、時折、大きな鯉が姿を現していた。六十年近い空白があったにも関わらず、ハルモニの日本語の語学力は、めざましい回復を見せた。
 「福岡は、いいですよ。…富山は、雪がものすごくて寒かったですよ」。 成Sさんは、歩きながら、そう日本語で呟いておられた。
 ポーランドの詩人、ヴィスワヴァ・シンボルスカの詩、『様々な出来事の一つの解釈』のなかに次のような一節がある。

「そして人生を生きぬくなら  戦争と戦争のあいまにしたいと思った」

 しかし、この国においては、イラク侵略、朝鮮半島情勢の緊迫化に人々の耳目が集まるなか、有事関連法案を一気に成立させようという気の滅入るような画策がなされている。
 集会を実現するには、今、取り組んでいることを一時中断せざるを得ないし、様々な迷いもあったが、有事法制が明らかに北朝鮮有事を想定して成立がはかられている以上、どうしても看過することができない。今回、有事法制、戦後補償、日朝交渉ーこの相互の関係性を検証し、深い思索を続けてこられた高橋哲哉さんを福岡にお呼びすることとなった。基調講演の後、高橋さんを始め、学生や市民グループの若い有志数名をパネリストとして迎え、対話集会を企画している。
 朝鮮半島情勢ーひいては朝鮮人との関係性を切迫したものとして捉え、戦争体制に屹立できる個人の思索を深める契機を求めている。