広島控訴審 判決要旨
(Last Update 2001.4.3)
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1.一審被告の本件控訴に基づき、原判決主文第1項を取り消す。
2.一審原告朴頭理、同李順徳、及び同河順女の右取消部分に係る請求をいずれも棄却する。
3.前項記載の一審原告らの本件各附帯控訴及びその余の一審原告らの本件各控訴をいずれも棄却する。
4.一審原告らの当審における予備的請求に係る訴えをいずれも却下する。
5.訴訟費用は、第一、二審とも一審原告らの負担とする。
判決要旨(抜粋)
第一 事案の概要
第二 判決理由の概要
一.請求1について
1.「道義的国家たるべき義務」に基づく請求(主位的請求)について
大日本帝国憲法のもとにおける国家無答責の原則の法理をふまえて、国家賠償法附則六項は同法施行前の行為について同法のそ及適用を否定しているので、(中略)一審原告らの請求(主位的請求)は、理由がない。
2.損失補償責任に基づく請求(予備的請求@(a))について
(前略)日本国憲法についてその施行前の行為に対するそ及適用を認めるべき法的根拠は存在せず、(中略)一審原告らの日本国憲法二十九条三項に基づく損失補償請求も、理由がない。
3.挺身勤労契約の債務不履行責任に基づく請求(予備的請求@(b))について(前略)各隊員と一審被告との間に私法上の契約関係の存在は予定されておらず、(中略)挺身勤労契約関係の成立を認めるに足りる証拠はなく、右契約関係の成立を前提とする同一審原告らの債務不履行の主張は、理由がない。
4.立法不作為による国家賠償責任に基づく請求(予備的請求A)について
(前略)憲法の前文及び各条文のいずれを個別的に見ても、また、それらを総合的に考慮しても、憲法の門限の解釈上、元従軍慰安婦及び女子勤労挺身隊員に対する謝罪と補償についての立法義務の存在が一義的に明白であるとは言えず、(中略)原審の右見解は憲法の採用する議会制民主主義の制度の下における右国会の立法過程及び国会議員の立法行為の性質等に照らし、是認することが出来ない。
いわゆる戦争損害に対する補償の要否及びそのあり方は(中略)国家財政、社会経済、損害の内容、程度等に関する十分な資料を基礎とする立法府の裁量的判断にゆだねられたものと解するのが相当であり(最高裁昭和四十三年十一月二十七日大法廷判決・民集二十二巻十二号二千八百八頁、最高裁平成九年三月十三日第一小法廷判決民集五十一巻三号千二百三十三頁参照)、いわゆる戦後補償問題であるとの一事をもってただちに立法不作為が国会賠償法上違法の評価を受ける場合の要件について異なる解釈を採るべきものと解することは出来ない。
5.立法不作為違憲確認請求(予備的請求B)について
(前略)相手方(一審被告国)の同意を欠く為、その余の点について判断するまでもなく、不適法であり却下をまぬがれない。
二.請求U(一審被告国の継続的な加害行為による国家賠償責任に基づく請求)について
2.一審被告国及びその公務員の行為は、国の行政部門の担当者による一般的な見解または調査結果を述べたもので、一審原告ら個人の客観的な社会的評価を低下させる内容のものと認めることは出来ないし、特定の個人に対する社会通念上、許される限度を超えた表現態様の侮辱行為に該当するものとも認められない。
3.請求V(いわゆる公娼発言による国家賠償責任に基づく請求)について
特定の個人に対する社会通念上許される限度を超えた表現態様の侮辱行為に該当するものとは認め難い。
四.原判決主文1項を取り消し、一審原告朴頭理ら三名の右取り消し部分に係る請求を棄却して、同一審原告らの附帯控訴及び一審原告柳・Cら七名の控訴を棄却するとともに、控訴審において追加的に提起された立法不作為違憲確認の予備的新訴は不適法であるから、これを却下することとする。
判決報告集会まとめ