政府は真摯な真相究明を!
元「慰安婦」たちをこれ以上あざむいてはいけない

真相究明の早期決着を急ぐ日本政府
6月29日付毎日新聞朝刊の一面トップに「『慰安婦』来月にも最終報告」という見出しで「政府は7月中にも真相究明の最終的な調査結果をまとめる方針を決定した。関係省庁やアメリカの国立公文書館の調査も終えたので、韓国挺身隊対策協議会も元慰安婦からの聞き取りに協力することになった。これに基づいて『強制連行があった』ことを認める方向で韓国政府との間で決着をつける」という趣旨の記事があった。
この記事を読まれて、政府がそんなに真剣な調査をやったのかと不審に思われた方も多かったのではないでしょうか。
はたせるかな、翌日の西日本新聞に、韓国挺身隊対策協議会が「事実無根」「誠意ある真相究明がない現時点で聞き取りに応じることはない」との声明と毎日新聞へ抗議を行ったことが報道された。毎日新聞の報道のズサンさもさることながら、八月に開かれる国連人権小委員会で「従軍慰安婦」問題が重要議題として取り上げられ、全世界的な批判をあびる前に決着をつけたい政府のあせりが反映された記事だったといえよう。

政府は手持ちの資料の全面的な公開と加害者側からの聞き取りを
昨年七月、政府は127点にわたる手持ちの資料を公表した際に「強制連行を裏付ける資料はなかった」を発言した。この発言に韓国の世論は激高し、元慰安婦のハルモニたちが「自発的に慰安婦になったというのか」を怒りに身をふるわせたことは記憶に生々しい。
その後民間の研究者によって新たな資料が次々に発見されるに及んで、政府は改めて再調査に応ぜざるをえなくなった。だが強制連行に関係した警察庁や労働省からは一点の資料も出されていない。(この省庁の資料は公開されていないため、民間人によって調べようがない)。また、強制連行に関わった当時の警察官や憲兵からの聞き取りもしていない現段階で、元慰安婦からの部分的聞き取りだけで「一部に強制連行もあった」という形で真相究明に幕を閉じるのはあまりにも不誠実であろう。

国家犯罪としての「従軍慰安婦」
「『従軍慰安婦』は民間業者が連れ歩いたもの」と、国の関与を全面否定してきた政府は、中央大学吉見教授が資料を発表するに及んで国の関与を認めざるをえなか??討するならば、「従軍慰安婦」は軍と国による政策として実行されたことが浮かび上がってくる。
中国への全面的侵略に乗り出した日本軍は中国女性に対する強姦の多発と、民間慰安所利用で性病が蔓延してきたのを防ぐため、軍専属の慰安所設立を図り、植民地朝鮮の未婚の女性を主に狩り出し始めた。軍と国による許可と、管理、協力の下に民間業者が連行し、慰安所を経営していった。
その全過程において慰安婦とされた女性の人格は全否定され、欺瞞と強制、暴力によって隷属させられていったのである。この真相こそ政府は自らの手で明らかにし、認め、謝罪し、補償しなければならない。
これまでのように政府が手持ちの資料を小出しにし、軍と国の関与をできる限り小さく見せようとする試みは、元慰安婦たちや支援者の怒りと不信を増すだけであろう。
日本政府の欺瞞的解決を許さないために、各地でこの問題に取り組む人たちとの共同行動が今ほど必要とされている時はない。