弁護士に聞く 山崎吉男さん
裁判のきっかけは
韓国で金文淑さんが弁護士を探していて、山本晴太さんに話がいったんです。彼から私に、やってくれないかと、まず聞き取りですね。
その前に、司法試験の受験勉強をしている時に友達になった李博盛さんと、一緒に合格したんです。李さんも在日朝鮮人なんですが、司法研修所には在日朝鮮人に対する差別があったんです。司法修習生さいようにあたってですね、誓約書を書けとか、保証人をつけろとかいうんです。それで、署名を集めたりして、運動して、撤廃させたんです。山本晴太さんとも受験勉強中知り合っていたんですが、その時に、山本さんが、日本の朝鮮侵略、在日問題でも古くから活動していたことを知った。彼は光州三人訴訟に、強制連行の裁判ですが、関わっていて、それで僕も弁護士登録をしたらすぐ、原告代理人になったんです。今一緒にやっている弁護士の多くは、研修所の誓約書問題に一緒に取り組んだ人です。
裁判のねらい
日本政府が国会と国連総会で公式に謝罪することを求めています。
国の公式謝罪を求めることは、現行法に明文の規定はないんですよね。でも、名誉毀損のときの謝罪はある。それを準用して、と主張しているんです。
従軍慰安婦ということで、政府関係者が謝罪したとはいうけれど、マスコミに対して言っているだけでしょ。僕が考えているのはですね、公式文書に確実に記録に留めるということなんです。国会でなら、国会議事録に記録されるんですからね。国連総会でもですね。
訴状は?
この裁判の訴状の構成は以下の通り。
請求の趣旨
請求の原因
第一 事実関係
一 日帝の韓国併合と戦争への朝鮮人の動員
二 原告らの被害事実
三 戦後補償の国際的潮流
第二 原告らの請求の根拠
第三 請求
[以上、編集者注]
請求の趣旨と言うのは、原告が何を求めているのかと言うこと、つまり、さっき話した謝罪と、それに賠償です。
請求の原因は、第一が事実関係で、一が背景事実で、総論、二が各論。第二は、こちらの事実を法的に根拠付ければこういうことなんだという主張。僕は成文法になるべくのっとって解釈し、やって行きたい。憲法、明治憲法などにのっとって、理性的に、法的に、やっぱりいけないことで、このようにしなければいけないんだよって言いたいわけです。
国の対応は?
被告の国は答弁書を出しました。訴状に対する、まあ答えというか、反論ですね。
簡単な答弁書がでています。
請求の趣旨に対しては、棄却を求める、つまり謝罪しません、賠償しません。
請求の原因については、追って、準備書面をもって主張します、それについては、後からちゃんと説明しますと言っている。
事実関係の認否がない、つまり、こちらが言っている事実を認めるかどうか、答えていない。これも後から準備書面で答えるというわけですね。
これからどう進行するのでしょうか
国が出してくる準備書面で、国が何を認めて、何を争う(こちらの事実や主張を否定する)かがはっきりします。
それからは、国が争うことに対して立証していかなくてはならないわけです。向こうが、いや違うというところについては、こちらが立証しなければならない。
総論的事実も立証しなければならない。従軍慰安婦は事実として間違いない。
各論証拠についても立証する。原告の主張している体験、事実が本当にそうだったかということをですね。
国が事実を全部認めれば争う必要はないわけで、普通は勝ちなんです。でもこの場合は法的構成が難しいから、こういう解釈が正しいんだよ、という主張をしなければならない。
第一回口頭弁論では何があるんですか
裁判ではまず、訴状を陳述しますと言うんです。でも、読まないんです。読んだことにして、「陳述します。」の一言で、終わりなんです。
それと、国側が答弁書を陳述します。これも「陳述します。」
それから、今回は原告のおばあちゃんたちが意見陳述をします。
支援する会に何を期待しますか
第一に、証拠集めですね。
他の裁判との連絡。釜山や上海や台湾や富山など実際の現場に行って証拠を探すとか、下関で原告のおばあちゃんが連れられて来られたのを見ていた人や、慰安所や工場で顔見知りだった人を捜し出すとか。情報があったら教えて欲しい。裁判所で証言してくれる人があればありがたい。
第二に、世論の喚起です。
財政面も考えていただけたら、ありがたいですね。
兵のための性処理施設の設置について
自分もそういう目にあいたくないし、自分の娘にも、自分の好きな人にもそういう目にあわせたくない。戦争のない世の中をつくって行きたい。そのためには、過去の悪は悪としてけじめをつけなければならない。
(7月1日。インタビュアー・中津千穂子、
要約、構成・山本悟)